言葉さえもままならない
耳が人より聞えない
同じモノから虐げられた
居場所を追われた犬が居た




犬は生きているのが嬉しくて
毎日 毎日 散歩した
どこまで行けるのか試したくて
疲れ果てるまで歩いたのさ




群れに入る事は許されず
毎日 毎日 一人ぼっち
道端にあるものは玩具の欠片
見つけては喜んだりもした




ある時犬はふと思ったのさ
どうして僕は周りと違うのか?って




「コイツは何を言ってるかわからない」
笑いながら皆が僕をぶつんだよ





いつのまに昔の懐かしい記憶が
ぼんやり ぼんやり 浮かんだのさ
そうしたらふとあの時の
小さな犬を見かけたのさ



思わず声をかけようとして
犬の元へ行こうとしたけど
遠くからちょっと見ているだけで
分からないように手を振った




「おじさんは一体誰なの?」って
「僕は君だよ」なんて言えないから
寂しそうに泣いてる君を見ても
遠くで見てるだけしかできなくて




もしも僕がもっと
器用に生きていれば
きっと立派になって
胸を張って 君は僕だと
言えたかもしれない




だけど僕は違った
僕は人になれなかったから
君は君のままで
僕は僕のままで
そのままでいいかもしれない




ずっと ずっと 近くに居て
もっと もっと 遠くにあった
でも でも 言えなかった
もう会うことは無いだろう




昔 昔 あるところに
耳が聞えない犬がいた
遠くを見つめる彼の目は



ぼんやりぼんやりしてたのさ
ぼんやりぼんやりしてたのさ・・・