やっと幸せになれるはずだった。
3年前のことがまるで昨日のよう。
1ヶ月後に式を挙げる予定だったけれど。
どうして運命はこんなにも残酷なの?
声に出しても誰も答えてはくれなかった。
お父さんもお母さんも兄弟もみんないない。
大好きなあの人は…もう思い出したくもない。
争いは何もかもを荒廃させて草木一本ない砂漠へと変えてしまう。
そう、人の心までも。
もう何日食べてないのかわからない。
遠のいていく意識の中、彼の姿が見えたような気がした。
残った力を振り絞って一生懸命背中を追いかけた――
* * *
窓の外はあじさいがたくさん咲いています。
空はどんよりと曇っていて雨がしとしと降ったりやんだりしています。
そんなある朝、女の子が生まれました。
あじさいの花がみずみずしく水滴を身にまとっている様子から、みずかと名付けられました。
お父さんと、2歳のお兄ちゃんのりょうはみずかが生まれるところを見守っていました。
お父さん、お母さん、りょう、みずか。
この日から笑いあり、涙あり、感動ありの長い長い物語(ストーリー)が始まります。
つづく。