誰も知らない
窟の奥で
誰も知らない
糸を紡いだ

誰も知らない
御伽噺が
誰も知らない
服を着させた

時に夢にただ
うなされる日々に
夜に眠れない
「飛び起きろ」の響き

視界が黒になる
深い雨の中
服が水を吸う
それでも歩く まだ

ああ
わたし蝶になる
綺麗な蝶になる
いつかこの服を
破り捨てるまで

まだ知らぬ君よ
どうか待っていてください

時に夢にただ
うなされる日々に
夜に眠れない
「飛び起きろ」の響き

時に嘘をまだ
信じられなくて
朝に飛び起きて
酷い白無垢の

ああ
わたし蝶になる
綺麗な蝶になる
けむくじゃらの手を
むしり取ってでも

わたし蝶になる
綺麗な蝶になる
どうか どうか どうか

まだ知らぬ君よ
そこで待っていてください

……白い蚕蛾の御伽噺……